fc2ブログ

ゆっくり緊張・ゆっくり脱力

八光流柔術では脱力を中心とした稽古ですが、上手に力を抜くためには実は力を上手に入れることも出来なくてはいけません。

八光流柔術における脱力に関しては以前に「八光流柔術の脱力とは」という記事を書いたので良ければそちらをご覧下さい。
http://ankoroneko.blog115.fc2.com/blog-entry-176.html

今回は脱力を学ぶ上でのポイントをひとつを紹介したいと思います

それは脱力も緊張も「ゆっくり」行うということ。

脱力も緊張も、つい瞬間的にやってしまいがちです。
ギュッと力を入れて、パッと力を抜く。
これはスイッチで言えばオンとオフのスイッチだけです。

八光流柔術における脱力と緊張はボリュームのツマミのようにゆっくり変化させていく必要があります。

では、なぜゆっくり脱力したり緊張することが必要なのか?

例えば

目の前に1キロの荷物が置いてあるとします。
これを持ってくださいと言えば、殆どの人が問題なく持つ事ができると思います。
しかしその時に丁度良い力の出し方をしているか、と言えばかなり疑問です。
1キロの荷物を持つときに1キロ分の力どころか2キロ、3キロまたは5キロぐらいの力を出してはいないでしょうか。

もしこの時ゆっくりと力を入れることが出来たなら、1キロの荷物を持つときに

100グラムの力を入れて・・・持てない
500グラムの力を入れて・・・持てない
800グラムの力を入れて・・・少し持ち上がる
1キロの力を入れて・・・・・持てる

というようにその荷物を持つ必要な分だけの力を使うことが出来ます。

皆さんは毎日の生活を振り返った時に、その時々に必要な力を使っているでしょうか?
食事の時に箸を持つ時、パソコンを打つ時等に必要以上の力を入れていませんか?

ゆっくりと力を入れることが出来れば、無駄な緊張を減らせるわけですから身体は省エネになります。
ですのでゆっくりと力を入れたり抜いたりすることは柔術だけでなく日常でもとても大事な身体の使い方なのです。

では、実際にゆっくりと力を入れたり抜いたりする為のエクササイズの方法をひとつ

二人で互いに正面に立ち、一人に両手首を持ってもらいます。
この状態で両手首を持たれた方は、八光捕りのように上に持ち上げる動きで「ゆっくり」力を入れていきます。
手首、肘、肩、背中や腰など段々と身体の遠くまで緊張を伝えていきます。
この時、注意しなくてはいけないのは「絶対に息を止めない」ということ。
瞬間的な緊張に慣れてしまっている人は、つい力を入れているときに息を止めがちです。
呼吸は自然の状態のままゆっくり力を入れていくことが大事です。ゆっくり脱力


両手首を抑えている人は、相手の持ち上げる力に拮抗するように力を入れていき相手の手が上にあがっていかないようにします。

ある程度の緊張を作ったら、その状態を少し維持した後、今度は「ゆっくり」と力を抜いていきます。
力を抜く時は、先ほどと逆で身体の遠いところからゆっくり力を抜いていき最後に手首の力を抜くようにしていきます。

じわこの時「じわ~っ」と身体が緩んでいくような感覚があればOKです。
人によって感覚は違うと思いますがゆっくりと力を抜いていくと身体の固さがじわ~っと溶けてゆくような気持ちよさが感じられるはずです。

2~3回、この動きを繰り返したら、今度は手首を下に切り下ろすように力を入れていき相手は先ほどと同じようにその力に拮抗させていく。

最初は難しいかもしれませんが慣れてくるとだんだん「ゆっくり」力を入れる感じ、抜く感じがわかってきます。

また、このエクササイズの面白いところはゆっくりと力を抜くと、相手もそれにシンクロするように力が抜けていくという現象がおきます。

これは自分の身体の変化が相手にも変化を及ぼしているからです。
柔術では自分の身体が緊張しているのに相手の身体が緩むはずがありません。
逆に言えば自分が緩めば相手も緩む。
ですので、自分の身体と相手の身体の変化のシンクロを感じるにもこれは良いエクササイズです。

それからもうひとつ面白い現象があります。
下向きの力をゆっくり抜いていく時に、相手の重心がふわ~っと浮き上がってきます。
まるで八光捕りのような感じ。
これはなぜか?
実は八光捕りというのは手をあげて相手を持ち上げるのではなく力を抜いていくことで相手の重心が浮かび上がる現象だというのがこのエクササイズで実感することが出来ると思います。


エクササイズの後、自分の腕や肘、肩を動かしてみてその変化を観察してみます。
又、八光捕りなどをエクササイズの前後にやってみてその変化を感じてみます。
変化が感じづらい場合は、エクササイズを片手づつ行ってみて左右の違いを感じてみるのも良いかと思います。

このエクササイズをしても技などに急激な変化はないかもしれませんが、ゆっくりと緊張や脱力の状態を作ることで身体のどの部分に力が入りやすいか、またどの部分が力が抜けにくいかなども明確になっていきます。

また、瞬間的な緊張や脱力からゆっくりと緊張や脱力が出来るようになると柔術の技だけではなく、日常の動きなどにもすべて変化があらわれてきます。

エクササイズのやり方は、今回の方法以外にも横や斜めなど工夫して色々な方向で試してみても良いかと思います。
また一人ででもゆっくり力を入れたり抜いたりは出来ますので、個人個人で色々工夫してみてください。


現代は、何事も「速さ」が求められる時代。
でも「ゆっくり」じゃないと見えないもの、感じられないものだってあります。

何事もバランスが大事。
速さばかりではなく、時にはゆっくりも味わいましょう。

急がず慌てず無理をせず
八光流柔術ではそんな稽古を楽しみましょう。

0 Comments

Post a comment