柔術稽古日誌「人差し指と小指」
まず前提として腕を一本の棒ではなく二つに分割するところから始める。
解剖学的に言うと前腕には橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)という2本の骨があるのだがあまり難しく考えずにとりあえず人差し指側と小指側にそれぞれ腕に繋がるラインがあると考えればいい。
まずは門人にこういう実験をしてもらう。

拳を作って腕を伸ばしてもらい、その拳を正面から押してみる。
その時に、拳の小指ラインを押したときと人差しラインを押した時の違いを確認する。
やってみるとわかるが同じ力加減で押したならば小指側を押した時よりも人差し指側を押した時の方が相手が大きく崩れる。
感覚の違いをよく比較してみると小指側を押されると力の方向がぶれやすく、肩までなかなか届いてこないことがわかる。
対して人差し指側を押されるとその力がダイレクトに肩に向かってくる感覚がある。
今度は相手の小指と人差し指を引っ張ってみて違いを比較してみる。
これもやってみればわかるはずだが、小指を引っ張った時よりも人差し指を引っ張った方が相手の身体が崩れやすい。
これ以外にも色々な形で試してもらうが腕のどの部位に力を加えるかで相手への効果が全く変わってくることに門人達も驚いている。
本当はもっと細かい説明もしたいのだが、実際に体感してもらいながらでないとわからない部分も多いので、とりあえずは上の結果から、相手の腕に力を伝えるときは押すときも引くときも人差し指側のラインに力を加えるという風に考えてもらえば良いです。
その後はこの人差し指のラインを意識しながら色々な技に応用してみる。
やってみるとあっけないくらいに簡単に相手が崩れていくので、今までなぜそれが出来なかったのが不思議になるくらい。
初段の型にもこの原理をあてはめていくと非常にスムーズに崩せるようになる。
さて、だいぶ感覚がつかめてきたところで今度は小指側のラインを考えてみる。
これはどのように使うのかと言うと、一言で言えば回転。
2本のラインを同時にかつバラバラに使えるようになると「螺旋」が起こる。
もし腕を一本の棒として考えてしまうと回転運動は螺旋ではなく単なる「捻り」になってしまう。
しかしわかっていてもこの動きは中々難しく門人達も苦戦。
とりあえず「捻り」と「螺旋」の感覚の違いはくりかえし稽古の中で体感していくしかない。
うちの稽古ではあまり型には時間を割いていなかったのだけど今年は身体の使い方の原理を型にどう応用していくかというのもボチボチやってみようかな(^_^)。