柔術稽古日誌「失敗からはじまる」
そういう意味では力の衝突が起きずに技が出来れば成功であり、衝突が起きれば失敗となる。
例えばある技をやっていて途中で力の衝突が起きると「あっ、失敗」と言って最初に戻って技をやりなおす。
もう一度やってまた衝突すればまた技をやりなおす。
門人の稽古を見ているとこのような状態を延々と繰り返している場面をよく見かけます。
こういう時は「技の途中で失敗したらその姿勢のまま止まって」と言い、失敗した姿勢のまま身体のチェックをしてあげます。

「重心は踵に来てる?つま先になっていたら踵重心にして」
「姿勢が前傾しているね。姿勢をまっすぐにして」
「肩が緊張しているから脱力して」
このように身体の問題点をひとつずつチェックしながらなおしていきます。
全ての問題点をなおしたら「じゃあ、そのまま技の続きをやってごらん」と言います。
すると先ほど力が衝突してぴくりともしなかった相手がまるでつっかえ棒が取れたように簡単に動き崩れて転がります。
技が失敗するということは必ずそこに原因があります。
その原因をなおすことが出来れば失敗の壁を乗り越えることが出来るし、逆に失敗したからといってその原因を探らずにただ何度繰り返しても同じ失敗を繰り返すだけです。
力の衝突を気にしすぎるとそれを恐れて技の失敗を避けようとしがちになります。
避けなくてはいけないのは力の衝突であって失敗という現象ではありません。
「失敗は成功のもと」という言葉がありますがこれを英語で言うと
「Failure teaches success」
直訳で言えば「失敗が成功を教える」
まさにそういう気持ちで失敗を捉えるのなら稽古というのは失敗しないことではなく失敗するところからはじまるのです。