柔術稽古日誌「技とリアクション」
すると他の門人が私にもそれをかけてくださいと言われて技をかけたら普通にコロンと転がりました。
リクエストした門人にしてみれば「いや、この技じゃなくてさっきの吹っ飛ぶやつです」と言うかもしれません。
ここには大きな勘違いというものがあります。
技をかけるという行為とその後のリアクションというのは別なんです。
例えばラーメンを作って食べさせると考えましょう。
不味いラーメンではお客さんも満足できませんから美味しいラーメンを作らなければなりません。
これは作る側の責任です。
美味しいラーメンが出来上がったとしてそれを食べてもらった時に相手がどのようなリアクションをするか。
これは食べる人によって違います。
にっこり笑って「おいしい」と言う人もいれば、表情を変えずに満足する人もいる。
もしかししたら美味しさのあまりバク転しちゃう人だっているかもしれない。

で、最初の話に戻るけどラーメンを食べた後のリアクションはあくまでも受け手側の反応なのだからこちらで操作できるものではない。
だから食べたらバク転するラーメンを作ってくださいと言われても困ってしまうのです。
ただ面白いのがリアクションというのは場の中である程度広がっていく性質があるということ。
美味しいラーメンを食べてバク転する人が一人二人三人と増えていくと、そうじゃない人達も段々このラーメンを食ったらバク転するんじゃないか、いやしなくちゃいけないのかもしれない、なんて気がしてくる。
だから道場において多数の人たちがあるリアクションを行うと、他の人たちもいつのまにか同じようなリアクションになっていく。
実際、ひとつの流派内で同じような稽古をするわけだから身体反応としてのリアクションがある程度共通してくるというのは当然だし、ある程度の統一感があった方が稽古はしやすいです。
ただし気をつけなければならないのは、どこまでが技でどこからがリアクションなのかをよく見極めながら稽古しないと技の本質を見誤ってしまいかねません。
稽古で必要なのは美味しいラーメンを作ることであって、相手をバク転させることではないのですから。