柔術稽古日誌「皮膚を撫でる」
相手の胸に手を当ててそのまま押し込もうとすると相手の筋肉や骨にぶつかってしまい、その衝突感を感じて相手は動きを止めてしまう。
しかし例えば相手の胸の皮膚をどの方向でも良いが動かしてみると、その動き自体は相手は何の抵抗も起こさない。
そこで胸の皮膚をやや斜め上にずらすように動かしていくと相手の重心がかかとに移動しながら浮いてきます。
その後は上にずらした皮膚を戻すように皮膚を下にずらしていくと相手は崩れます。
実際にやってみるとうまく出来ればあっけないほど簡単に相手が崩れます。
受けた方も力どころかほとんど触られて動かされた感触が無いままに崩れるので思わず「あれっ?」って感じになります。

ポイントは極力軽く触れること。
皮膚一枚の感覚が大事なので皮膚二枚や三枚でも接触が強いぐらいです。
ですので実際に相手の皮膚を動かすというよりは道着が相手の皮膚と考えて触れるぐらいが丁度良いです。
それから皮膚を下げる動きの時につい相手を崩そうとして押してしまいたくなるのでこれも注意。
最後まで皮膚だけを動かす感覚を維持しなければなりません。
さらにこういう稽古もしてみました。
相手の首に手を当てて相手をお辞儀させるように崩します。
しかしいきなり首を押し込んでも骨に当たって相手はびくともしません。
そこで首の皮膚を上にずらしながら相手をお辞儀させると相手は抵抗できずに簡単に前のめりに崩れていきます。

どんな方向への崩しにしろ皮膚を使ったやり方は原理は同じです。
先程も言ったようになるべく軽く触れないと皮膚の崩しは起きません。
感覚的には「撫でる」ぐらいが丁度良いです。
撫でるように触れると相手は抵抗が出来ない、というか抵抗しようという感覚すら起きません。
なぜなら撫でるというのは相手にとっては触れられているという手の感覚が無いようなもの。
「手が無い」書いて「撫」でるですから。